アイルランドの一人のおばあちゃんから産み出されたもの

先週の土曜日、斜め向かいの家の方から
「ちょっととっても急なんだけど、
今日従兄弟が沢山集まってて
よかったらご飯食べにこないかと思って、
どうかしら?」
と誘ってもらった。


彼女の名前はWanさんと言う。
中国系の顔立ちをしている。
シンガポールで育って
大学はニュージーランド
就職はロンドンという人だ。
金融関係の仕事をしていた。
アイルランドで友達の結婚式があって、
そこでご主人と出会った。


ご主人のAnthonyは一見、
白人にしか見えないのだが、
今回始めてわかった事は
お父さんがマレーシア人だってことだ。
NYで生まれてその後すぐに
オーストラリアで18歳まで過ごし
アメリカの大学を出て
NY州のIBMに勤めている。


二人はロンドンとNYとの
大西洋を挟む遠距離恋愛を続けて
結ばれ、彼女はNYにやって来た。
そして今は可愛いMartinがいて
また来年の2月にもう一人生まれる予定だ。


地球を東西南北縦横無尽に駆け巡る感じの
若い感じのよいカップルだ。
(本当、まだ若いのに、2ミリオンの家を買ってるのはすごい)



そんな彼女の家にお邪魔したら
なんと従兄弟が既に寛いで
「おおいらっしゃ〜い」
的な歓迎を受けた。



彼らはご主人側の従兄弟だった。


なんでも彼らのおばあちゃんという人が
豪傑らしかった。


おばあちゃんは若い頃にアイルランドからNYに出て来て
マンハッタンの大金持のコンパニオン(お世話係)を
していた。
みんなに気にいられ、あちこちに友人や繋がりができたが、
自然の多いアイルランドに帰って
地元の若者と結婚し13人(!)子供をもうけた。
そして93歳まで生きていた。



おばあちゃんは子供をみな
アイルランドで産んで育てたんだが
NYで働いていた時のコネなどを生かし
頭が良い子供達の教育はロンドンやNYで
行った。
そして、一人が成功すると
そのお兄ちゃんや、お姉ちゃんを頼って
みなアイルランドから巣立って散らばった。


13人のうち
女の子達はアイルランドに残る子が多かった。
Anthonyのお母さんはアイルランドに残っていた。
年下の方だったらしい。


「おばあちゃんは、3人位しか育ててないよね。
後は上の兄弟が育てたようなもんだ。」
「そうだよ、僕の母さんが沢山の兄弟を世話してるような写真が
山ほどあるよ。」
「僕の父さんは若い方だから写真すらない。」
「父さんは3人位は養ってたとおもうなぁ」


等と親戚の話が次から次へと尽きない。
全然知らない私でも1時間位で段々と
親戚関係やそのキャラクターがわかって来た。



話を総合すると
Anthonyのお母さんは看護士をしている時
マレーシア人の医者の卵のお父さんに
ダブリンの医科系大学で出会った。
お父さんは研究のため、しばらくするとすぐにNYのコロンビア大学に移ってしまった。
お母さんはお父さんを追いかけて
NYで働いていたお兄さんやお姉さんをたよりに
NYまで来てしまった。
お兄さんやお姉さんは彼女の面倒を見てやりながら
看護士の口などを世話をした。
そして彼女はお父さんをものにし(!)
押しかけて結婚前に妊娠してしまったのが
Anthonyのようである。



アトランタソーシャルワーカーをしている人
オーストラリアに住んでる人、
シンガポールで働いている人
と色んな人がいる。
そして社会的地位が高い人もいれば
そうでもない人もいて
でもここでは、
そんな事で評価されたり判断されたりはしないのだ。
何故なら彼らは
みんなアイルランドのおばあちゃんからうまれ
『世界中にちらばった面白い一家」であるからだ。




本当に楽しそうだった。
いつもサンクスギビングに集まるおばさんの家では
おばさんは40人前以上のディナーを用意するそう、
夏にはみんなでアイルランドに集合するんだそうだ。


Anthonyは5、6歳の頃
アイルランドにいる時に
親戚の伯父さんや年長の従兄弟達に
ビールを飲まされて
吐いてしまった。


その時、みんなが言ったのは
「大丈夫か?」ではなく
「絶対にお母さんには言うな」
だったそう。
それを面白おかしくみんなが話題にしていた。


そしてそういう話題に事欠かず
次々に爆笑の渦が起こる。


「ファミリー」っていいな、と本当に思った。


こういう集まりになんとなく参加してる遊んでいる子供達は
こうして沢山の
(成功してる金持ちの伯父さんから、お金はそんなにないけど素晴らしい家庭を持ってる人まで)
様々なシミレーションを実際に見ながら
自分の人生を知らずに設計できる。
そして自分のアイデンティティー、
自分がどこに帰属しているのかという答えを毎年再確認してる。
この従兄弟たちの子供達もまた幸せだな〜と思った。




中国の一人っ子政策がどこまで浸透して
どうなっているのかわからないけれど、
従兄弟ができないって残念だなぁ〜と思う。


日本でもこんな従兄弟会は
みんなが忙しいから
あんまりないだろうなぁ。


我が家の家族5人だって
スケジュール合わせて集合するのが大変なんだものな。



一人の好奇心溢れるアイルランド女性から
13人の子供が生まれ、
それぞれがまた子供を産んで
その孫たちが
親抜きで
一緒に楽しそうにできるなんて
アイルランドのおばあちゃんは天国から
ほほ笑みかけてるに違いないと思った。



おばあちゃんは専業主婦で
新聞にのるような偉業を成し遂げたりしたわけではないだろうけれど、
13人もの子供を育て、見守った。
あなたの子供、孫が世界に散らばり
でも毎年はアイルランドに集まっている。
大きな家に住む従兄弟が
みなを招待してまた助け合っている。
あなたはとてつもなく大きな仕事をしたと私は思う。







アイルランド西部が彼らのおばあちゃんの土地。
夏はとても美しいそうだ。


アイルランド西部の景色がふんだんに使われている映画『LEAP YEAR』

彼らはこの映画自体はあまりうまく作られていないけれど
風景は絶景だよ、と勧めてくれた。
私は男優さんが美男だったので筋とか関係なく楽しめてしまいましたw