志と渇望: 思った通りにやるのだ。

今朝、ヨガの先生が
「思った通りにはならないが、やった通りにはなる。」
という書を見せて下さった。

本当にその通りだと思う。


凡人の私は
思った通りにやったことが数少ないので、結局
「思った通りにはならない」ことが多い。
思った通りにやれば、
思った通りになるはずなのだ。


しかし思った通りにやるのはかなり難しい。


思った通りにやれないのは
意志薄弱

物理的な不可能
もあると思うが
大抵において
「意志が弱かった」で片付けられそうだ。



この前、小学5・6年生への読み聞かせをすることになった。
絵本を読んでもよかったのだが、
坂本龍馬が流行ってるから
ちょっと関連した人物ということで
中央公論から出ている江藤淳責任編集の「勝海舟」より
咸臨丸に乗り、日本に帰国するまでのお話を
拾い読みしながらしてみた。


彼は
思った通りにやろうとした
人物である。


面白かった。


勝海舟オランダ語の辞書
ズーフハルマ
が欲しくてしょうがないんだけれど、
お金がなくて買えない。
そこで
持っている人に借りようとするのだが、
貸してくれない。
そこで勝海舟は、
「寝ている間は使わないのではありませんか」と
交渉し
その日から2年間休みなく夜中から明け方まで
本の持ち主の所に通って
ズーフハルマを2冊筆写するのである。
一冊は自分のため、
もう一冊は売った。
買ってくれたのは蘭学の先生。
今のお金で400万円ほどで買ってくれた。
その内、130万円ほどは
貸してくれた人に御礼として渡し、
残りは生活費に使った。


こう書くと簡単な事だが本当に凄いことだ。



読み聞かせは、勝海舟のお話にしたのだけれど、
本当はもう一冊、こっちにしようかな
と迷った本がある。



それは小澤征爾の「僕の音楽武者修行」という本だ。


その時にぼくは堅い決心をしたのだ。
オーケストラがダメなら、せめてぼく一人だけでもヨーロッパに行こうと。
外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土、そこに住んでいる人間、をじかに知りたい。とにかくぼくはそう思った。もちろん青二才のぼくに大金のあるはずはないが、多少の金さえもっていれば、あとは日本のスクーターでも宣伝しながらい行けば、ぼく一人ぐらいの資金は捻出できるのではないかと思うようになった。(引用)


このように決意した若き小澤青年の志を理解した人たちの中に富士重工の方がいらして、ラビットジュニア125CCを手に入れるのである。富士重工から出された条件は
日本国籍を明示すること
楽家であることを示すこと
事故を起こさないこと
の3つ。
小澤青年はこの条件を叶えるべく白いヘルメットにギターを担いで日の丸をつけたスクーターにまたがり、欧州を巡るのである。

彼は貨物船でスクーターと共に63日かかってヨーロッパにつく。フランスマルセイユ港に上陸し、スクーターでパリに向かう。スクーターで街をまわって夜は音楽会にでる生活を送ってる内に(驚くべきことに、彼はこの時、計画は皆無。留学でもなんでもなく、ただ上陸しただけなのである。)指揮者コンクールがある事を知る。

そこでそのコンクールに応募するのだが、書類の不備で締め切りに間に合わなかった。日本大使館にかけあってくれるよう頼むのだか、上手くいかず、ふと
アメリカ大使館に音楽部がある事を思い出した。そこへコンクール出場の便宜をはかってもらうように頼むのだ。(小澤征爾アメリカ人でなく、生粋の日本人なのに)

その2週間後、正式にコンクール受験ができる事になり、猛然と勉強を始め、この初めての指揮者コンクールで54名の応募の中から彼は優勝をしてしまうのである。

その所を引用しよう。

…試験となれば、やはりあがってしまう。その上言葉がうまく通じないときている。だから的確な指示をあたえたくとも、ふさわしい言葉が浮かんでこない。
そこでぼくは思った。よし、5体でぶつかってやれと。これが通ぜず落選したらしかたがない。…クソ度胸を固めた。ぼくは腕試しのつもりで大胆に棒をふっていった。誰にもわかるように派手な身ぶり、手ぶり表情を見せて…。これだけはぼくもよく知っている世界共通の音楽用語「アレグロ」「フォルテ」などを連発しながら…。

このようにしてクソ度胸を固め、優勝をかっさらった小澤青年は、優勝の特典からフランス滞在手帳の交付と下宿も提供されるのである。そこからベルリンの指揮者コンクール、と次々と快挙を成し遂げ今日にマエストロに至るのだ。




勝海舟小澤征爾
時代も背景も違うけれど、
彼らに共通しているのは
高い志

渇望。


世界に出てやるという高い志。
そして
その志を実行する源は
蘭学や音楽に対する渇望だ。



周りと同じで良い
とか
楽したい
とか
志が低い。



また



渇望は自分の内面奥深くにあるものだ。
外を見回し
あれも
これも必要だ
というのは欲望であって、
渇望ではない。


尊敬する
MITの石井教授も
「知への渇望」について
東京の講演でおっしゃっていた。



石井教授をご存知ない方は
この紹介ビデオをどうぞ。


この方もまた


渇望
を体現されているようなお方だ。





お金がないからできない。
時間がないからできない。
環境が整ってないからできない。
という人は
お金があっても
時間があっても
環境が整っていてもできないに違いないのだ。



自分を受け止めること
現状を受け止めることも必要。


でも
大海原が待ってるよ。



さあ、
みんな、志と渇望の用意はいいかい?

先人にならって
ともかく、海に出てみよう。

一緒に船出をしよう。

「思った通りにはならない
やった通りにはなる。」

とりあえず
思ってばかりいないで
やってみようか。

何回でも!

違うルートが見つかるかもしれないし。
新大陸を発見することになるかもしれないもの。

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こちらはもう中古でしか買えないようです。

新潮文庫から出ています。若い小澤征爾さんの魅力的な写真も沢山あります。