さがしもの

夫を駅まで送った後、ドライブウェイの雪かきをした。一インチくらいの積雪だけど、温度が低くなってそのまま凍ったりしたら面倒だと思ったから、息子を学校に送る前に雪かきをすることにしたのだ。車が5台停まるくらいの面積なのだが、結構汗ばむくらいの運動になる。

雪かきのあと家入って、まだ高いびきの息子に「今日学校どうするの?学校は普段通りあるみたいよ。」と声をかけた。しばらくたって台所に降りてきた彼はゆっくりと俳句誌など読みながら余裕の朝食をとっている。彼に「今日は雪で道路も不安定だから、早めにでないと。。」とここまでわたしも結構余裕。

さて、早目に車を出そうといつものカギをかけているところを見ると、カギがない。

あ、コートのポケットに入れたままだ、と思い、コートクローゼットを開けると、わたしのコートがない。

ソファにでも脱ぎ捨てたかと、ソファをみてもコートがない。

椅子の背にでも掛けたかとダイニングの椅子をみても、コートがない。

雪かきをしたスコップをしまったときに、コートも脱いだのかとガレージを見てもない。

洗面所にもない。

結構大きな体積のものなのに、どこを探しても見当たらない。

このあたりから、わたしはかなり早いスピードであちこち動いているようで実はなにもしていないという不思議な現象を行っている人物になった。

すごいスピードで頭の中も回転している。
雪かきまではコートを着ていた。
息子の部屋ではコートを着ていない。
ガレージから息子の部屋に行くまで、トイレもしていないし、ご飯も食べていないぞ、等自分の行動を頭の中ではっきり再生させながら、時計を睨んで学校までの最短時間を計算したりしている。

体も頭も普段の倍速あるいは3倍速で動いているのに、コートはみつからない。

落ち着こう、とコーヒーを飲み、オレンジも食べ、深呼吸してもう一度ゆっくり探してみると、息子の部屋の息子が落とした布団の下にコートがあった。

倍速、3倍速では見落とすものがあるんだとつくづく思った。

そういう時の視野はきっと普段の2分の1、3分の1になっているんだろう。





今、世の中は昔と比べてなにかとてつもない速さで変化しているように思われる。
温暖化もスピードアップしているし、グローバル化もスピードアップ。
情報は一瞬のうちに、世界中にネットで配信される時代だ。



こういう時代だからこそ、わたしたちは自分たちの視野が、情報や物、人間が高速で動いている分、ひょっとしたらかなり狭くなってはいないかと問いかけるべきなのかも知れない。一生懸命、激しく動き回り、ものすごく考えているようで、何も働いていないということはないだろうか。

何か大切なさがしものをみつけられるようにしたい。
未来を開くカギが中に入っているはずだから。